夜、電車で窓を見ていると、世界が何重にも重なって見える。とくに街中を通っているときはそうだ。
まず、自分が映っている。その向こうに街の灯りがちらちらと通り過ぎてゆく。それだけなら分かりやすいのだが、映っている自分の後ろにも窓があり、その窓の向こうの明かりも、その窓に映った自分の後ろ姿やなんかもやはり見える。それらが眺めていると、透過しつつ、重なりつつ、複雑な旋律のようなものを頭に巻き起こしてゆく。
旋律からはいくつかの思いがこぼれ落ちるのだが、こぼれた部分は夜が吸い込んでゆく。
電車はそしらぬまま進んでゆく。
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