ここ数日どうも体調が思わしくなくて、主にひきこもってだらだらしていたわけですが、それでもちょこちょこと、気になってたことをやったりしてました。
えーと、タンゴの古典「エル・チョクロ」という曲を私はわりとよく弾くのです。この曲はもともとベーシストの西村直樹さんが教えてくれたのを、気に入って自分でもソロでよくやっているのですが、由来とか歌詞とか何も知らないので気になっていました。
それで、先日、お客さんとして来ておられたスペイン語翻訳家の平井うららさんから、タンゴの歌詞集を貸していただく機会があり、「ちょっとちゃんと読んでみようかな。あわよくば自分流の訳文を作ってみようかな。」と思ったわけです。
それで、やってみたものの、どうももやもやする。それでネットで調べてみたら、もっともやもやする。もやもやしたものを書くのもどうかなとも思うのですが、とりあえずそのまま、もやもやと書いてみることにします。
EL CHOCLO
letra de Enrique Discépolo,Carlos Marambio Cantán
Música de Angel Gregorio Villoido
Esta milonga que es en mis horas de tristeza,
Te examiné en tu recuerdo cariñoso.
Encadenando me has tú notado dulcemente;
Siento que el alma se me encoge poco a poco.
Hoy que los años han blanqueado ya mis sienes,
¡Tango querido, viejo tango que me embarga
Con la cadencia de tu música sentida !
Recuerdo aquello época tan linda que se fue.
このミロンガはおれの悲しみの時間、
おまえのいとしい記憶を呼び起こす。
おれは縛りつけられたようになっていて、お前は気づいていた;
おれの心はちょっとずつキュンキュンしていたんだ。
今はもう年月がおれのこめかみを白くしてしまった、
愛しいタンゴよ、古きタンゴよ!
お前の和音の流れがおれをつかんで離さないのだ!
過ぎ去ったあの美しい時間を思い出させるから。
Por tu milagro de notas agoreras
Nacieron sin pensarlo las paicas y las grelas,
Luna en los charcos, canyengue en las caderas
Y un ansia fiera en la manera de querer...
Al evocarte...
Tango querido...
おまえの預言者のような不思議な音色から
思いがけずもパイカとグレラのような恋人たちが生まれたのだ。
みずたまりに映る月、カニェンゲダンスをする尻
愛に飢えたけだものの欲望のマナー
お前を思い出す時…
いとしきタンゴよ…
Siento que tiemblan las baldosas de un bailongo
Y oigo el rezongo de mi pasado
Hoy que no tengo...
Más a mi madre...
Siento que llega en punta a pie para besarme
Cuando tu canto nace al son de un bandoneón...
おれは踊り場の石床が震えるのを感じる
そして過去のつぶやきを聴くのだ
今はもう…
母さんもいない…
おれにキスをするために、つま先立ちで近寄って来るのを感じるよ
バンドネオンの音色からお前の歌が生まれる時にね
(アンヘル・バルガス版より)
日本語訳は池田が書籍の細川幸夫訳とグーグル翻訳および画像検索やユーチューブ情報などを見比べてでっちあげたものです。
訳していて言うのも何ですが、なぜお母んが出てくるのか、とかよくわかってないです。
そもそもこのアンヘル・バルガス版の歌詞、書籍によると「マラビオ・カタンとディセボロの歌詞をうまく編集してアンヘル・バルガスが歌ってるレコードから収録したもの」らしいので、オリジナルの意図などはよくわからないかも、なのです。
では、オリジナルの意図とは何か、これを調べ始めるとまたややこしい。
まず、英語版のWikiを参照してみたら、
「最初、Villoldoさんが書いた歌詞は食べ物としてのとうもろこしの詞であった。彼はのちに別バージョンの”Cariño Puro”というタイトルの詞を書いた。また他のバージョンを、Carlos Marambio Catánさんが1930年に書いた。しかし一番有名なのは、Enrique Santos Discépolo さんの1947年バージョン。これは人生の方法としてのタンゴを歌っている。」(Wiki英語:読み違えてたらごめん)
とある。うーん、よくわからんけど、ディセポロさんバージョンが一番有名で出来がいいってことなのかなあ…?
それで、念のためにスペイン語版のWikiを参照してみた。
すると、
「El chocloのオーケストレーションはÁngel Villoldoさんによって1903年に発表され、1905年に出版された。しかし、もともとのメロディー"タンゴのGuardia Vieja"と呼ばれる部分は1898年には作曲されていた。その作曲にはCasimiro Alcortaという今は忘れ去られて不遇のうちに死んだ黒人のバイオリニストが貢献していたらしい。
1903年にブエノスアイレスのエル・アメリカーノ・レストランで、ホセ・ルイス・ロンカージョ楽団が楽譜を書き起こした時、現地オーナーとの衝突を避けるため、下層階級と共演するときには「クレオール・ダンス」という曲名にして演奏していた。
エル・チョクロはとうもろこしの意味で、ヴィジョルド自身はシチューの具で一番美味しいからその名前をつけた、と言っているが、とうもろこしのような毛の人の渾名だとか、タンゴが生まれた売春宿地帯のことを指してるのだとか、いろいろ言われている。」
(wikiスペイン:読み違えてたらごめん)
とある。ええ?それって、作曲そのものもパクリかもってこと?、いや、パクったとまでは言わなくとも部分的無断流用なのかも?、カシミロって誰?
こうして、調べれば調べるほどもやもやが広がってゆき、よくわからなくなって来ているのです…。まあ、日本で言えば明治時代の頃の話、あいまいでも不思議はないのですけど。